支払調書とは、法人が1年間に行った一定の支払いについて、その相手先や支払額等を記載した報告書のようなもので、翌年1月31日が提出期限となります。
具体的には、税理士、司法書士、社会保険労務士などの士業への年間の合計額が5万円を超える報酬の支払いをした会社や、年間15万円を超える不動産の使用料を個人に支払った会社などは、その支払いをした年の翌年の1月31日までに支払調書を作成し、「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」に源泉徴収票と共に添付して税務署に提出する必要があります。
なぜ、支払調書を提出する必要があるのかを理解するためには、まずは源泉徴収の仕組みを理解する必要があります。
所得税は納税者がその年の所得金額と税額を計算し、これらを自主的に申告して納付する申告納税制度が原則とされています。これと併せて給与、利子、配当、報酬、料金等については、その支払者がそれらを支払う際に所得税をあらかじめ徴収して納付する源泉徴収制度が採用されています。
取引先(個人事業者)にデザイン料、原稿料などの報酬や料金を支払う場合は、その支払い額に応じた割合の所得税を源泉徴収することが必要です。源泉徴収した所得税はその翌月の10日までに納付しなければなりません。例えば、弊所にお支払い頂いた顧問料等も対象になってきます。
この源泉徴収制度は義務であるため、報酬等を個人に支払う会社(源泉徴収義務者といいます)は、所得税の源泉徴収を行わなければならないことに注意が必要です。義務であることから、会社から個人に支払う報酬については、例え報酬の支払を受ける側の個人で確定申告を行う場合においても、源泉所得税の源泉徴収をしなければなりません。なお、会社間(法人間)の支払いの場合、源泉徴収は不要となります。
源泉徴収の対象範囲ですが、会社が源泉徴収をしなければならない支払は、「給与・アルバイト料関係」と「報酬・料金関係」に分かれます。報酬・料金関係とは、デザイナーへのデザイン料、ライターへの原稿料、講演料等の個人事業者に支払われる報酬や料金のことをいいます。
なお、源泉徴収の対象となる支払い金額に下限はありませんので、少額の支払であっても所得税の源泉徴収をすることが必要となります。
源泉徴収の金額とその納付方法ですが、源泉徴収する額は、以下のように1回の支払額により異なります。
①1回の支払額が100万円以下の場合⇒支払額の10%を源泉徴収
②1回の支払額が100万円超の場合⇒100万円までの部分について10%、100万円を超える部分につて支払額の20%をそれぞれ源泉徴収します。
徴収した源泉所得税は、徴収した翌月の10日までに、金融機関等で納付します。納付は、所定の納付書「報酬・料金等の所得税徴収高計算書」を使って行います。納付期限までに納付しなかった場合には、不納付加算税と延滞税が課されますので注意が必要です。
報酬等を支払った会社が源泉徴収をしただけでは、その支払いを受けた個人(納税義務者)の納税は完了しません。その人が年間に支払いを受けた報酬等を集計して確定申告することで、最終的にその個人が納付する所得税が確定することになります。
源泉徴収を行った会社は、報酬等の支払いを受けた個人その人が確定申告をするための資料として、その個人が1年間に支払いを受けた(会社側から見れば支払った)報酬の総額等を記載した支払調書を翌年1月に作成、交付することになります。また、会社はその支払った金額に応じ、支払調書を税務署に提出する義務があります。
支払調書と源泉徴収票はいずれも適正に課税するために税務署が提出を義務づけている書類で、「法定調書」と呼ばれます。法定調書は60種類以上あり、その中に前述の支払調書や源泉徴収票が含まれるということになります。法定調書が税務署への協力書類と呼ばれることもありますが、これは裏付け資料としての要素があるからなのです。
なお、紛らわしいところで支払調書と源泉徴収票の違いですが、その仕事を生業としている人に報酬を支払った場合は支払調書、社員やアルバイトなどに給与を支払った場合は源泉徴収票を使用することになります。